子供は嘘をつく、と言うけれど

先日、ある人と話していて興味深い話がありました。

それは「今の子供は、昔の子より嘘をつく」というものです。

その方は教育関係の仕事をやっておられる、私よりも経験豊富な方です。

その話を聞いて、私はとっさに「ああそれなんとなくわかるなあ」と思いました。

なんとなくのイメージなのですが、「昔の子」の方が素朴で素直だったのかもしれない、という気がします(それは今の子供よりも「いい子」だったということではありません)。

私もこの業界に入って10年ほど経つのですが、嘘をつく生徒に何人も出会ってきました。

「そんな嘘つかんでええのに、なんでそんな嘘つくんだろう」と思ったことも何度もありましたし、「まあ目の前の大人をいきなり信用して、なんでもかんでも正直にしゃべってしまうのも、それはそれで問題あるかもな」と思ったりしました。

ただし、嘘をついたことが理由で、私が生徒を怒ったことはありません。

何を隠そう、私自身がこれまでよく嘘をついてきたからです。

前述の方との話で私は「子供が嘘をつくのは保護者の方が嘘をつくからかもしれません」という意見を述べました。

子供は保護者の方の真似をするからです。

その方は「そうかも」と言っていました。

その会話の後に、いろいろと考えたことがありました。

それは「大人だって嘘つくよなあ」という、当たり前と言えば当たり前のことです。

自分だってたくさんつくし。

もしかしたら「自分は嘘をつかない」という大人も多いのかもしれません。

そういう人がいたら、逆に少し心配になってしまいます。

むしろ、「上手に嘘をつくことが大人の条件だ」ということも言えるのかもしれません。

そして、「いい嘘」と「悪い嘘」という区別もあるような気がします。

私が気になるのは、「悪い嘘」の方です。

「嘘」という言葉が適切でないなら、「言葉と行動が一致していない」「建前やきれいごとばかり言う」などが正確な表現でしょうか。

そんな大人を見て育った子供なら、「別に嘘ついてもええか」となっても不思議ではありません。

しかしそれは、大人になっていく上で身につけていくべき「器用さ」に見えて、実は不器用な嘘のように感じます。

とても上手い嘘とは思えません。

私が生徒に言いたいことは、「自分にとって大切な人、それはぎりぎりのところで言えば、家族や本当に親しい友達ということになるけど、そんな人には嘘をつかん方がええよ」ということです。

そして「自分が誰かに嘘をつくなら、相手が自分に嘘をついても文句言うなよ」ということでしょうか。

そして、もし生徒が自分に対して嘘をついたとしたら、それはその生徒が自分のことを信じ切れていないということなのかもしれません。

自分がその生徒にとって信じられる人間になったら、本当のことを話してくれるのかもしれません。

ところで、自分が以前ある塾の講師に応募した時、「生徒を指導する際に大切にしていること」を聞かれて、「生徒に嘘をつかないこと」と答えた記憶があります。

今考えたら、あれこそ「嘘」だったかもなあ、と思います。

正確には「できるだけ」という言葉を入れるべきだった、と思います。

おそらく、そこには自分の願望が入っていたんだろうな、と思います。